【5分で理解】CPIとPCEの違い|PPIとの関係性やすぐに使える指標も紹介

FRBが掲げる「雇用の最大化」と「物価の安定」という二大目標のうち、物価の安定を測る上で欠かせないのがCPI(消費者物価指数)とPCEデフレーター(個人消費支出デフレーター)です。
トレーダーにとっても物価指標はマーケットの方向性を判断する重要な要素ですが、CPIとPCEの違いを厳密に理解し、使い分けられている人は意外と少ないのではないでしょうか。
ただ何となく予想との上振れや下振れを確認するだけでは、FRBの政策意図や市場の本当の反応を読み切ることはできません。
本記事では、CPIとPCEの定義や特徴の違い、PPIとの関係性、さらに発表タイミングやデータの性質を踏まえた効果的な活用法までを以下の項目で解説します。
- そもそもCPIとPCEとは
- CPIとPCEの大きな違い
- CPIとPCEはどちらが重要なのか
- CPIとPCEとよく比較されるPPI(生産者物価指数)とは
- CPIとPCEを確認する際のポイント
- Fintokeiではファンダメンタルズ分析に役立つツールを提供
- まとめ
そもそもCPIとPCEとは
米国の物価指標として特に注目されるのが、CPI(消費者物価指数)とPCEデフレーター(個人消費支出デフレーター)の2つです。
CPIとPCEデフレーターとは、そもそもどのような指標なのかを見ていきましょう。
CPI(消費者物価指数)とは
CPI(Consumer Price Index)とは、都市部に住む消費者が購入する財・サービスの小売価格の変動を測定する指標であり、米国労働省労働統計局(BLS)が毎月中旬に公表しています。
一定の基準時点を100として、同じ商品・サービスを購入するのに必要な支出額が時間とともにどう変化したかを数値化することで、物価上昇(インフレ)の度合いを表します。
CPIには品目範囲に応じて様々な指数がありますが、一般にニュースなどで言及されるのは全米都市部世帯を対象とした「総合CPI」です。
出典:FRED
ただし総合CPIの算出には、生鮮食品やエネルギーといった天候や季節、地政学リスク(戦争や産油国の減産方針など)によって短期間で大きく上下する品目も含まれます。
したがって、生鮮食品やエネルギーなどの短期的な変動要因を除いた「コアCPI」も注目されています。
PCEデフレーター(個人消費支出デフレーター)とは
PCEデフレーター(Personal Consumption Expenditures Deflator)とは、都市・農村を問わず米国の家計が国内で消費した財やサービスの価格変動を測定する指標であり、米国商務省の経済分析局(BEA)が毎月下旬に公表しています。
PCE(個人消費支出)は、GDPの個人消費の算出にも用いられる指標であり、米国経済において個人消費がGDPの約7割を占めることから、PCEデフレーターはGDPの先行指標とも位置づけられています。
また、FRB(米連邦準備制度理事会)が「個人消費支出(PCE)の価格指数の年間変化率で測定されるインフレ率を長期的に 2 パーセントに達成することを目指している」としていることからもPCEが金融政策で重要な役割を果たしていることが分かります。
参照:Board of Governors of the Federal Reserve System
なおPCEデフレーターには、CPIと同様に食料とエネルギーを除いたコアPCEもあり、短期的な変動要因を除いた基調的なインフレ動向を見る際に用いられます。
出典:FRED
CPIとPCEの大きな違い
CPIとPCEデフレーターはともに物価に関する指標ではあるものの、両者が必ずしも近い数値にならない、または逆に動くこともあります。
出典:FRED
このような差が生まれる原因として、CPIとPCEに以下のような大きな違いがあることが挙げられます。
- 対象者と算出項目
- データの取得元
- 計算方法
その1:対象者と算出項目
PCEデフレーターは米国全体の消費者による支出を対象にしている一方で、CPIは調査対象地域が主に都市圏に絞られています。
また、指標の算出に必要となる支出項目の含まれる範囲にも違いがあります。CPIとPCEデフレーターの算出に含まれる項目は、以下の通りです。
CPI | PCE | ||
品目 | ウェイト | 品目 | ウェイト |
食料 | 14.5% | 食料 | 7.5% |
住居 | 44.2% | 住居 | 17.2 |
衣類 | 2.4% | 衣類 | ー |
医療 | 8.3% | 医療 | 16.7% |
交通 | 16.6% | 交通 | 7.5% |
娯楽 | 5.3% | 娯楽 | 5.7% |
教育・通信 | 5.7% | 金融・保険 | 7.3% |
その他の財・サービス | 3.0% | その他 | 38.0% |
参照:U.S. Bureau of Labor Statistics
例えば医療費については、PCEでは消費者に代わって支払われた医療保険料まで含めて計上されますが、CPIでは消費者自身が実際に支払った自己負担分のみを対象としています。
したがってPCEでは医療サービスのウェイト(比重)が高めになる傾向があります。
一方でCPIでは帰属家賃や家賃といった住宅関連費用の比重が約4割と非常に大きいのが特徴です。
つまり、PCEは企業・政府経由の消費支出など家計以外の支出も含めた包括的な物価指標であるのに対して、CPIは消費者の実際の購買体感に近い範囲にフォーカスするため数値にずれが生じることがあるのです。
その2:データの取得元
CPIは家計側の調査(消費者支出調査:Consumer Expenditure Surveyなど)や小売店での価格調査を情報源としています。
一方でPCEデフレーターは企業の売上統計(NIPA:国民所得・産出勘定)を利用し、企業側から見た「どの商品がどれだけ売れたか」というデータを元に算出しています。
つまりCPIは消費者アンケートや店舗価格のサンプリングに基づく方法、PCEデフレーターは国全体のマクロ経済統計に基づく方法だというわけです。
つまり企業売上ベースのPCEは実際の経済活動全体を反映しやすいものの、消費者アンケートに依存するCPIは回答者の偏りなど調査設計の影響を受ける可能性があるためブレが生じることがあります。
その3:計算方法の違い
PCEデフレーターは連鎖方式(フィッシャー指数)、CPIは固定バスケット方式(ラスパイレス指数)を計算方法として採用しています。
連鎖方式では四半期ごとに消費構成のウェイトを更新しています。
例えばある商品の価格が上がった場合、消費者が価格が低い代替品に切り替えるという行動の変化も指数に反映されます。
一方で固定バスケット方式では、ウェイトは頻繁には変えず基準年に決めた「買い物かご(バスケット)」の中身とその比率(ウェイト)を固定して計算します。
したがってCPIは計算方法がシンプルで直感的に理解しやすい反面、代替による節約などの消費パターンの変化が反映されないため、インフレ率がやや高めに出やすい傾向があるのです。
CPIとPCEはどちらが重要なのか
結論、FRBによる金融政策の判断材料としてはCPIよりもPCEの方が重要ですが、トレーダーにとってはCPIとPCEを使い分けることが重要です。
先ほども解説した通り、CPIは毎月中旬頃に公表されるのに対して、PCEデフレーターは月末近くに公表されます。
このように時間差で公表されることから、短期的なマーケットのインパクトという点では速報性のあるCPI、経済の基調や政策判断という点では包括性の高いPCEと使い分けられるケースが多いのです。
したがってCPIとPCEどちらが重要なのかを考えるのではなく、CPIでまずは直近のインフレ状況を確認して、後からPCEでより精緻な確認を行うというプロセスを欠かさないことが重要です。
CPIとPCEとよく比較されるPPI(生産者物価指数)とは
PPI(Producer Price Index)とは、国内生産者が販売する商品やサービスの価格変動を測定する指標であり、米国労働省労働統計局(BLS)によって毎月公表されています。
消費者が購入する財になるまでの原材料〜卸売段階の価格変動を先に捉えられる、かつCPIよりも早い時期に公表されることもあり、インフレの先行指標としての役割を果たしています。
例えば、PPIの急上昇が確認できると後のCPI上昇に圧力がかかるのではないかと判断することができます。
実際にCPIとPPIを比べてみると、PPIの方が先にピークをつけている場面があることが分かります。
出典:FRED
つまりCPIやPCEほど市場へのインパクトはないものの、市場が織り込む前の物価シグナルとして注目度は高い指標がPPIなのです。
CPIとPCEを確認する際のポイント
CPIやPCEデフレーターを確認する際は、以下のポイントを意識しましょう。
- 予想値とのギャップ
- PPI以外の先行指標も確認する
- マーケットの注目度が物価指標に集まっているか
予想値とのギャップ
一般的に経済指標は、結果が市場予想とズレるかどうかが相場へのインパクトを決定づけます。
なぜなら市場参加者は事前に予想値を織り込んでおり、実際の結果が予想より大きく上振れ・下振れするとそのギャップが為替レートに反映されるからです。
CPIやPCEデフレーターも同様です。結果が予想を上回ればドル買い材料、下回ればドル売り材料となりやすく、そのサプライズの程度が大きいほど相場の変動も大きくなります。
一方で、結果が予想通りでサプライズがない場合は相場反応も限定的になりやすいです。
なおCPIとPCEには総合指数とコア指数があるので、総合とコアの両方について予想との差をチェックすることも重要です。
PPI以外の先行指標も確認する
CPIとPCEデフレーターには、PPI以外にも予測に使える先行指標があります。先行指標の数値を確認しておくことで、CPIとPCEデフレーターの結果をより予測しやすくなります。
先行指標の一つが、クリーブランド連銀(Cleveland Fed)が公表している「Inflation Nowcasting」です。
クリーブランド連銀は、CPIとPCEの当月予測値を毎日更新で公表しています。
この予測値は非常に精度が高いことで知られており、歴史的に見てプロのエコノミスト予想よりも的中率が高く、FRBの内部資料であるグリーンブックに匹敵する精度と評価されるほどです。
出典:Federal Reserve Bank of Cleveland
一般の経済指標カレンダーでは予想しか載っていませんが、Nowcastを参照することでマーケットでの予想が過小または過大評価されていないかの手掛かりが得られるでしょう。
マーケットの注目度が物価指標に集まっているか
経済指標の市場インパクトは、その時々のマーケットの関心テーマによって大きく変わります。
物価指標がマーケットの主要テーマではない場合、たとえ結果が予想と多少ズレても相場がほとんど動かない、つまり「ノーイベント」になりやすい点にも注意が必要です。
例えばインフレ率が安定している局面や、他に優先度の高いイベント(例:金融危機への懸念や重要な中央銀行会合)が控えている場合、市場参加者の関心は物価指標から逸れてしまい、結果にサプライズが出ても一過性で終わったり反応が鈍くなったりします。
常にマーケットのテーマを意識しつつ、今回の物価指標がそのテーマに直結するかを見極めることが重要です。
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まとめ
この記事では、CPIとPCEの特徴や違い、PPIとの関係性、そしてトレードでの活用ポイントまで詳しく解説しました。
速報性のあるCPIで直近のインフレ動向を押さえ、包括性の高いPCEで基調を確認する流れを実践すれば、より精度の高いファンダメンタルズ分析が可能になります。
さらにPPIを先行指標として組み合わせることで、CPIやPCE発表前に市場の物価シグナルを先取りすることもできます。
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