雇用統計だけでOK?ADP雇用統計があてにならない4つの理由

特にドル関連銘柄の材料としてADP雇用統計が注目される中、「雇用統計(BLS)とADP雇用統計のどっちを見ればいいのか」と感じた経験はないでしょうか。

ADP雇用統計は民間企業が発表すること、そして雇用統計と乖離することもあり、「ADPはあてにならない」「雇用統計だけ見ておけば十分」といった声が上がることもあります。

しかし実際には、ADP雇用統計は十分に使えるデータであり、むしろADP雇用統計の方が正しかったというケースも過去にはありました。

この記事では、ADP雇用統計が「あてにならない」といわれる4つの理由を整理しつつ、その結論に加えてトレードに活かすための見方まで詳しく解説します。

  • ADP雇用統計があてにならないといわれる4つの理由
  • FRBがADP雇用統計はあてにならないと考えていない
  • ADP雇用統計の方があてになるケースもある
  • ADP雇用統計の見方を抑えておこう
  • Fintokeiではファンダメンタルズ分析に役立つツールを提供
  • まとめ

ADP雇用統計があてにならないといわれる4つの理由

ADP雇用統計が雇用統計の予測のあてにはならない、または雇用統計だけ見ておけばいいといわれる理由として、以下の4点が挙げられます。

  • 雇用統計の結果と乖離があるから
  • 公的機関によって公表されたものではないから
  • 公表されるデータが限られているから
  • 速報値からたびたび修正されるから

ADP雇用統計と雇用統計の違いについては、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。

【5分で理解】ADP雇用統計と雇用統計の違い|見るべき項目も紹介

雇用統計の結果と乖離があるから

ADP雇用統計と雇用統計との結果が乖離することは少なくありません。

例えば2025年6月、ADPは民間雇用者数が3.3万人減少したと発表しましたが、後に発表された雇用統計では同月に14.7万人の増加と報告しました。

このように方向性が逆転するケースもあり、雇用の動向を見極めたい市場参加者の混乱を招く要因となっていることからADP雇用統計はあてにならないと言われることがあります。

公的機関によって公表されたものではないから

ADP Research Instituteが発表するADP雇用統計は、政府公式の経済統計ではなく、民間企業が独自のデータをもとに算出したレポートに過ぎません。

したがって、米労働省が発表する雇用統計と比べて「信頼性が劣る」「公的統計と比較すると限界がある」と指摘されることがあります。

またADP雇用統計の算出対象は自社の給与処理サービスを利用している企業に偏るため、全米の労働市場を完全には反映しきれていない点でも信頼性が劣ると言われることもあります。

公表されるデータが限られているから

ADP雇用統計で公表されるデータの項目が、雇用統計と比べて限定的である点も指摘されています。

たとえば、ADP雇用統計では「民間雇用者数」や「賃金上昇率」、「業種別・企業規模別の内訳」などを公開していますが、失業率・労働参加率・平均労働時間といった詳細データは含まれていません。

一方で雇用統計では、職種別の就業構造や平均時給など雇用市場の分析に必要となるデータが網羅されています。

したがってADP雇用統計だけでは労働市場全体の需給バランスを完全に把握することはできないことから雇用統計を見ていればいいと言われることがあるのです。

速報値からたびたび修正されるから

ADP雇用統計は発表後に数値が改定されるケースが度々あり、速報段階でのデータをそのまま鵜呑みにできない点が「あてにならない」といわれる理由のひとつです。

改定が行われる背景には、企業からの給与データの遅延報告や、後日追加された事業所情報の反映があります。

とはいえ、改定が行われるのはADP雇用統計だけではなく雇用統計でも同様なので、改定が行われるから信頼できないという意見はADP雇用統計独自の問題ではないでしょう。

FRBがADP雇用統計はあてにならないと考えていない

ADP雇用統計は個人トレーダーからは「あてにならない」と見なされがちですが、FRB(米連邦準備制度理事会)はそのように切り捨ててはいません。

例えば2025年10月、ウォラー理事は講演で「労働需要の弱まり」を分析する際、ADP雇用統計などを労働市場を補完的に把握する代替データとして挙げました。

参照:Cutting Rates in the Face of Conflicting Data

政府閉鎖によって9月分の雇用統計が期日通りに発表されなかった影響はあるにしろ、FRB理事がADP雇用統計を確認しているということに間違いはないでしょう。

したがって、FRB理事が参照するデータをあてにならないと安易に無視することは、相場判断の視野を狭めるリスクにもつながるといえます。

ADP雇用統計と雇用統計は相関あり

ADP雇用統計は雇用統計の予測のあてにならないと言われることがありますが、両者に相関性があるとされているデータも発表されています。

SVB(Silicon Valley Bank)アセットマネジメントのレポートによると、2010年から2025年にかけてADP雇用統計と非農業民間雇用者数との相関係数は0.61になっています。

なお上記はノイズの多いパンデミック期間を除いた数値であり、パンデミック期間を込みで計算をすると0.73です。

参照:Navigating the labor landscape: Decoding key economic indicators

ADP雇用統計と雇用統計が完全に相関しているわけではないものの、十分な関連性がある とみなすことができます。

ADP雇用統計の方があてになるケースもある

雇用統計よりも先に発表されるADP雇用統計の数値の方が正しかったというケースも過去にはあります。

たとえば2025年6月分のADP雇用統計では民間雇用が3.3万人減少と報告されたのに対し、雇用統計では14.7万人増加となったことで、一部で雇用市場を楽観視する動きが見られました。

しかし2025年7月分と同時に発表された雇用統計の改定値では、6月分は1.4万人の増加と14.7万人増加から大幅に下方修正されました。

結果として、6月分から雇用市場の鈍化を示していたADP雇用統計の方が実態に近かったと評価する声があがったのです。

雇用統計もあてにならないといわれることもある

ADP雇用統計があてにならないという批判と同じように、BLS(米労働省)の雇用統計の信頼性に対しても疑問が投げかけられることがあります。

その理由の一つが、雇用統計の調査回答率の低下です。雇用統計はアンケート形式の調査によって集計されますが、その回答率が年々低下傾向にあるという訳です。

参照:Household and establishment survey response rates

回答率が下がれば、統計の信頼性が失われ、実際の雇用動向との乖離が生じやすくなります。これが「雇用統計も万能ではない」と言われる所以です。

したがっていずれか一方に依存するのではなく、両者を組み合わせて相場分析に活かすことが重要です。

ADP雇用統計の見方を抑えておこう

ADP雇用統計の見方について、ADP雇用統計で公表される3つの項目それぞれについて見ていきましょう。

  • 民間雇用者数(Change in Private Employment)
  • 賃金動向(Pay Insights)
  • 業種別・企業規模別の民間雇用者数

民間雇用者数(Change in Private Employment)

ADP雇用統計で最も注目されるのが、民間雇用者数の前月比増減(ADPの公式サイトでは「Change in Private Employment」表記)です。

見方は単純で前月比で増えていれば雇用市場は堅調、減少していれば雇用減速のサインとなります。

また単月の変化も重要ですが、過去数ヶ月間のトレンドを確認することも重要です。短期的なブレをならして見ることで、労働需要の強弱が明確になります。

たとえば2025年以降の雇用者数推移を見てみると、7月頃からやや軟調している傾向が読み取れます。

出典:ADP Research

賃金動向(Pay Insights)

ADP雇用統計が公開している「Pay Insights」では、雇用者を在職者(Job Stayers)と転職者(Job Changers)に分け、それぞれの賃金上昇率を確認できます。

出典:ADP Research

例えば転職者の賃金上昇率が上がっていれば、企業が人材確保のために賃金を引き上げている可能性が高く、賃金インフレの兆しと判断することができます。

これはFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ判断にも直結する重要なデータです。

「賃金が上がりすぎている=利上げ継続懸念」という構図を理解しつつ、確認していくとよいでしょう。

業種別・企業規模別の民間雇用者数

ADP雇用統計では、民間雇用の変化を業種別・企業規模別に細かく分類して発表しており、「どの分野で雇用が増えているのか、減っているのか」が一目で把握することができます。

出典:ADP Research

たとえば、建設業や製造業の雇用が減少している場合は、投資や耐久財需要の鈍化が示唆される可能性があるため、景気の先行きに不安が生じることがあります。

反対に、サービス業や教育・医療分野の雇用が堅調であれば、個人消費が底堅い可能性を示す一つのサインとされます。

業種別に「どこが伸びているか」または「どこが弱いか」を対比させると、米経済の強弱を立体的に理解しやすくなります。

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まとめ

この記事では、ADP雇用統計があてにならないといわれる理由や、雇用統計との違い、実際の相関性、そしてトレードに活かせる見方まで詳しく解説しました。

ADP雇用統計は雇用統計と併せて活用すれば、景気の強弱をより早くつかむことができ、相場の先読みにつながることは間違いありません。

特に、民間雇用者数・賃金動向・業種別推移の3点を押さえておくことで、ドルの買われやすい局面やリスクオフに傾くタイミングを見極めやすくなるでしょう。

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Fintokei編集部

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